中南米のメキシコを舞台にした小説や作家についてまとめています。
メキシコはスペイン語圏なことから、セルバンテス賞を受賞している作家が多いのも特徴です。
メキシコ麻薬戦争やセルバンテス受賞作などを掲載しています。
メキシコが舞台の小説
「死者の日」 ケント・ハリントン(著)
ティファナを舞台にしたノワール小説の傑作です。
ポスト「ジム・トンプスン」とも言われたノワールが得意な作家です。
「老いぼれグリンゴ」 カルロス・フエンテス(著)
革命下のメキシコを舞台に描くフエンテスのアメリカ批判の書
革命騒ぎの中、米国から死に場所を求めメキシコにやったきた老作家、メキシコ人革命家のグリンゴ爺さん。作家の最期の謎やアメリカ人女性と革命軍士官の愛憎劇を織り交ぜながら描く1冊。
他の作品に、多様な人種と社会階級が混在するメキシコ・シティを舞台にした「澄みわたる大地」やラテンアメリカ文学最高の名誉とされるロムロ・ガジェーゴス賞を受賞した「テラ・ノストラ」などがあります。
1987年には、カルロス・フエンテスはセルバンテス賞を受賞しています。
「愛のパレード」 セルヒオ・ピトル(著)
20世紀メキシコを舞台にしたサスペンス系小説
1942年、歴史学者のデル・ソラールは、自分が住んでいた集合住宅「ミネルバ館」の殺人事件の謎を解こうとする。当時の住人への訪問をくり返すが!?・・
世界に先駆け社会革命を経験したメキシコは、大戦を逃れた多くの亡命者を受け入れた。この時代を背景にした不条理。。
「2666」 ロベルト・ボラーニョ(著)
ボラーニョ文学の遺作で集大成
南米、チリの作家ボラーニョの作品ですが、世界一危険な都市と言われるメキシコのシウダードファレスの実在事件をモデルにした物語も。
メキシコ北部の架空の都市サンタテレサなども。
ぶ厚い冊子で、2段組の重厚な小説です。
紀行文
「メガロマニア」 恩田 陸(著)
「蜜蜂と遠雷」で知られる直木賞作家による中南米紀行
メキシコ、グアテマラ、ペルーなどの古代文明の足跡を辿り、中南米の遺跡を歴訪する。
インカ、マヤ、アステカなどのメキシコ古代文化に触れられる1冊。
アステカ神話などメキシコ絡み
「テスカトリポカ」 佐藤 究(著)
第165回(2021年)直木賞受賞作
このミステリーがすごい!2022年版【国内編】第2位
メキシコのアステカ神話ちらつく骨太ハードボイルドクライムノベル
メキシコの麻薬カルテル密売人、川崎の日本人が絡む犯罪小説。
滅亡した王国「アステカ」の神の影が・・アステカ文明に興味ある人にも
メキシコ麻薬戦争「犬の力」3部作
「犬の力」 ドン・ウィンズロウ(著)
このミステリがすごい!2010年版《海外編》第1位
メキシコを舞台にしたメキシコ麻薬戦争の傑作「犬の力」3部作とは、アメリカの作家ドン・ウィンズロウによる壮大なクライムノヴェルです。
「ザ・カルテル」 ドン・ウィンズロウ(著)
このミステリがすごい!2017年版《海外編》第2位
第2弾の「ザ・カルテル」も評判が上々でした。
「ザ・ボーダー」 ドン・ウィンズロウ(著)
第3弾の最終作「ザ・ボーダー」で幕を閉じました。
メキシコとアメリカの関係はもちろん、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルなどの中南米からの麻薬の流れなど、メキシコ麻薬戦争だけでない現実も知れたように思います。
「ザ・ボーダー」 あらすじ&レビュー
メキシコを中心とした30年に及ぶ壮絶な麻薬戦争「犬の力」「ザ・カルテル」から続く3部作の最終章
あらすじ
麻薬カルテル組織(シナロアカルテル)のボス、アダン・バレーラ亡き後、その子供達の世代がボスの座を狙います。第3世代の世継ぎ争いが物語りの根幹です。
差し当たりアダンの右腕だった男(ヌニェス)がボスになるが、シナロアカルテルの3巨頭のそれぞれの息子達、リック、イバン、ダミアンにアダンの妹エレナ、エスパルサの警護隊長だったティトなど、5つ巴の様相となり世継ぎ争いが混沌としてくる。
そこに、第1世代の生き残りラファエル・カーロが絡んできます。
アメリカの合法化により大麻・コカインでの利益が厳しくなってきたカルテルは、ヘロイン市場に手を出し始める。
ニューヨークに蔓延するヘロイン流通を、ニューヨーク市警が囮捜査で調べる。大統領選に出馬する娘婿と麻薬資金が繋がっていることを突き止める。
シリーズ通して主人公であるアメリカの麻薬取締局(DEA)捜査官局長のアート・ケラーは、どう立ち向かっていくのか・・・
アイリッシュ系でニューヨークのチミーノ一家と結託し殺し屋組織の頭目になったショーン・カランやアメリカ人で唯一カルテルのボスに昇りつめたことのある麻薬商エディ・ルイスなどお馴染みのキャラクターも登場します。
「ザ・ボーダー」のレビュー
世界一危険な都市「シウダード・フアレス」、サンディエゴとの国境の「ティファナ」、メキシコ湾に近い「ヌエボラレド」の3つの主要な国境(ボーダー)などカルテルの勢力事情と国境事情はさみつつ
レビュー
大傑作でした。小説(架空の物語)を読んでいるのか、現実を読んでいるのかわからなくなるくらい、アメリカやメキシコの抱える現実の問題点などがわかる1冊だと感じました。
アメリカとメキシコの麻薬問題と世の中の実情社会問題を読んでいるようですごくよかったです。
「犬の力」から続くカルテル組織の第3世代の新たな世代が中心ですが、最終章にふさわしく前2作を凌ぐ面白さだと思いました。
出来事や人名は架空にしても、実在する組織や街の描写、アメリカとメキシコの関係、グアテマラの現状など、ほぼ現実に近い感じなんだろうと思いました。

上巻だけで765ページ、上下巻で1570ページもあるよ