北欧ミステリーの簡単なあらすじとレビューを記載しています。
長く続いたミレニアムシリーズについても触れています。
北欧ミステリー 【あらすじ&レビュー】
「チェスナットマン」 セーアン・スヴァイストロプ(著)
バリー賞新人賞受賞
冒頭から衝撃的なシーンで凄惨な過去の事件が語られる。
その後、現代の事件が起き、ユーロポールの刑事と女性刑事のコンビが事件解決に捜査を始めます。そんな中、第2、第3の犠牲者が・・
そして、被害者の共通項が徐々に明らかになってくると社会問題も絡んでいることがわかります。
レビュー
意外な犯人と闇の深さがあり、北欧ミステリーらしい作品でした。
グロい描写もあり、クライムサスペンスという感じも強いミステリです。
680ページある骨太ミステリで長いので、途中でだれてしまいそうになりましたが、終盤にきて面白さと緊迫感がいっきに増してきました。
怪しい人物が少なく、犯人が全くわからない状況で終盤へ。
タイトルからもわかるとおり、チェスナットマン(栗人形)という素材を絡めた要素が北欧らしい雰囲気も満載でした。
また、脚本家らしく場面ごとに章が切られているので、テンポよく読み進められました。
「時計仕掛けの歪んだ罠」 アルネ・ダール(著)
スウェーデン売上1位の傑作犯罪サスペンス
3つの15歳の少女失踪事件。
主人公の刑事が犯人を追ううち、不審な人物の取調べを行なうが、話は意外な方面に展開し・・
レビュー
序盤からミステリーとしての書き方がうまく、グイグイ引き込まれました。
謎の整理なども分かりやすく書かれ、伏線が散りばめられています。
ただ、物語は根本から覆すような意外な展開になってきます。
15歳の少年達のボートハウスの挿入文は何なのか!?
第1部と第2部では様相が違ってきて、驚きの展開に・・
第3部から事件解決に向けて全体層が見えてきますが、ここからも単純ではない展開があるので、飽きずに読めます。
終盤にきても、さらに深い裏の闇が見えてきて、一筋縄で行かない所が奥深く面白かったです。
そして、最後の1ページの衝撃
北欧ミステリーらしい小説で、普通におすすめだと感じました。
「三分間の空隙(くうげき)」 アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム(著)
コロンビアが舞台のクライムノベル
北欧スウェーデンの作家による「三秒間の死角」の続編
コロンビア麻薬事情
- 70年代~90年代のメデジンカルテル、カリカルテルに続き、反政府ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)がコカイン産業を資金源。2016年にコロンビア政府と停戦合意
- あらゆる形で摂取されるコカインのうち、85%はコロンビア産
そこからメキシコのカルテル経由でアメリカ人600万人のもとに届けられる - コカインキッチンと言われるジャングルでの製造が欠かせない理由。コカインの製造は森やコカの葉が必要で、ゲリラの所有する土地で、ゲリラの許可を得て初めて栽培を行うことができる。
レビュー
ミステリというよりはクライムノベルという感じで、複雑過ぎず読みやすかったです。
書き下ろしのような感じで、いっきよみ出来るタイプの小説でした。
ただ、テーマも含め、比較的ありきたりな感じでもあるので、絶賛するほどの面白さは感じませんでした。
ウィンズロウのメキシコ麻薬戦争「犬の力」3部作にニュアンスが似ていますが、かなり単純化(安っぽく!?)したような印象がありました。
「凍氷」 ジェイムズ・トンプソン(著)
フィンランドが舞台の北欧ミステリです。「極夜カーモス」から続くシリーズ第2弾です。
2つの事件と向き合いながら歴史と現在の交錯、国事情やヘルシンキの街描写、歴史の問題点などが良かったです。ノワール小説のような感じです。

このシリーズは4冊ありますが、この2巻目の「凍氷」が一番面白かった気がします。
「湖の男」 アーナルデュル・インドリダソン(著)
「湿地」「緑衣の女」の2年連続ガラスの鍵賞でお馴染みの著者のシリーズ第4弾です。
ハンガリー動乱やプラハの春に軽く触れつつ、東西冷戦絡みで個人的に面白かったです。
冷戦絡みで史実とスパイ系の話で、個人的ランク上位にくる一冊でした。
「許されざる者」 レイフ・GW・ペーション(著)
CWA、ガラスの鍵賞等5冠
スウェーデンミステリ重鎮の警察小説です。時効への「法で裁けぬ悪を裁く」がテーマになっています。
犯人探しとしてはそんなに面白いとは思いませんでしたが、ドラマとして全体的に骨太で面白かったです。
北欧ミステリファンにはお馴染みのオロフ・パルメ首相暗殺事件触れつつ。
「笑う警官」 マイ・シューヴァル & ペール・ヴァールー (著)
スウェーデン発の金字塔と言われる警察小説です。
マルティンベックシリーズの第4弾。昔の小説で、少し古めです。
今の北欧ミステリーブームの火付け役とも言われてるが、個人的にはそんな面白くなかったです。
「緑衣の女」 アーナルデュル・インドリダソン(著)
氷の国アイスランド作家のミステリー。翻訳第2弾
ガラスの鍵賞2年連続受賞とのことで期待し過ぎたせいか、期待した程は面白く感じませんでした。
ただ、DVの小説ととれば、まあまあ考えさせられる問題点でした。
「特捜部Q 〜自撮りする女たち〜」 ユッシ・エーズラ・オールスン(著)
デンマーク作家の人気警察シリーズ第7弾
「特捜部Qシリーズ」は毎回デンマークの社会問題や闇を織り込んでいますが、今回は、社会福祉問題でした。不正受給絡み。
面白い警察小説シリーズとして安定しています。
読みやすさと面白さもちょうどいい感じです。
「ボックス21」 アンデシュルースルンド&ベリエヘルストレム(著)
バルト三国のリトアニアを絡めたミステリ。
「熊と踊れ」で多くの賞を受賞した著者のシリーズ第2弾です。
ヨーロッパの売春事情問題
リトアニアなどバルト三国とロシアの歴史的関係なども少し絡めた作品になっています。
展開の割に引っ張るので、長く感じなくもありませんでしたが、テーマとヨーロッパの闇が現実問題として良かったです。
ミレニアムシリーズ!?
ミレニアムシリーズは、ミレニアム1~6まで発売されています。
2019年12月に発売されたミレニアム6で完結しました。
北欧ミステリーブームの火付け役として映画化もされています。
大きく分けると
- 「ドラゴン・タトゥーの女」
- 「火と戯れる女」
- 「眠れる女と狂卓の騎士」から成る3部作と
- 「蜘蛛の巣を払う女」
- 「復讐の炎を吐く女」
- 「死すべき女」の3部作に分けられます。
スティーグ・ラーソン
スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンが推理小説「ミレニアム1~ドラゴンタトゥーの女~」を執筆します。映画化もされました。
その後も、ミレニアム2~3と続きます。
2008年には世界で2番目に売れている小説家となりました。
しかし、2004年に50歳の若さで死去します。
ダヴィド・ラーゲルクランツ
スティーグ・ラーソンの死から11年後、ダヴィド・ラーゲルクランツによって4~6が刊行となりました。
- 2015年に「ミレニアム 4~蜘蛛の巣を払う女~」
- 2017年に「ミレニアム 5~復讐の炎を吐く女~」
- 2019年に「ミレニアム 6~死すべき女~」
スティーグ・ラーソンほどの重厚感や政治性(ポリティカル要素)は少ないものの、意志を引き継ぎ作品を執筆してきました。
スウェーデン首相暗殺事件の真相!?
2020年7月17日に、「スティーグ・ラーソン最後の事件」という本が発売されました。
最初の3部作の作家であるスティーグ・ラーソンが残した資料を元に、事件の真相を追うドキュメンタリーです。
34年前に実際に起こった、未解決のスウェーデン首相(オロフ・パルメ)暗殺事件の謎を追及する捜査実録です。
この事件については、ミレニアム3などの内容にも出てきます。
ミレニアムシリーズで一番面白いのは!?
「ミレニアム3~眠れる女と狂卓の騎士~」は、2010年にアメリカで最も売れた本となります。
「ミレニアム3」には、スウェーデンのオロフ・パルメ首相暗殺事件などの現代史の話題も出てきます。
スウェーデンの過去の政治的なことやストックホルムの街の描写なども多く、シリーズの最高傑作と言えるのではないでしょうか。
ポリティカルサスペンスとしてもおすすめの1冊です。
「ミレニアム5・6」 あらすじ&レビュー
「ミレニアム5~復讐の炎を吐く女~」 ダヴィド・ラーゲルクランツ(著)
レビュー
ミステリ要素が薄いですが、4から引き継いでるテーマでもあり、安定の面白さでした。
ミレニアム3までとは重厚感もポリティカル要素も違いますが、読みやすく及第点の面白さはあると思います。
ミレニアム4~6は、3までとは違った物語の長さ(冊子の薄さ)なので、いっき読みにも向いていると思います。
「ミレニアム6~死すべき女~」 ダヴィド・ラーゲルクランツ(著)
ミレニアムシリーズの完結巻
レビュー
相変わらずの面白さがあります。
北欧の空気感が伝わってきて、旅行に行きたくなるような街の描写もあります。
スウェーデンだけでなく、プラハやモスクワなどの規模の大きい話になっているところも面白いと感じました。
ちょっとした記述がヨーロッパの価値観などわかるところも良かったです。
今回も、物語が進むにつれ、国防大臣のエベレスト登山の時の謎などが絡んできます。ポリティカルの要素も〇
リスベットは妹カミラと対峙しながら身の周りの展開ですが、2~3つの事柄が進んでいくので飽きません。
おわりに
星数の基準
- 物語の面白さ
- 街や自然などその土地の風景や情報描写
- 歴史的事実などの現実性
の3点から評価しています。
「英国ミステリーとイギリス文学」の記事も書いています。