【ザ・ボーダー】あらすじと読書感想-ドンウィンズロウのメキシコ麻薬戦争3部作

米国作家でクライム・ノヴェルの巨匠、ドン・ウィンズロウの「犬の力」3部作について記載しています。

最終章の「ザ・ボーダー」のあらすじなどを掲載しています。

骨太の長編ながら、世界の情勢としてもおすすめ作品で、読むべき1冊だと感じました。

【犬の力】3部作とは!?

このミステリがすごい!2010年版《海外編》第1位の「犬の力」に始まり、第2作目「ザ・カルテル」、第3作目「ザ・ボーダー」へと続く3部作のクライムノヴェルです。

犬の力
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2009/8/25

メキシコを舞台にしたメキシコ麻薬戦争の傑作で、アメリカの作家ドン・ウィンズロウによる壮大なクライムノヴェルです。

麻薬戦争を描いたドン・ウィンズロウのクライムノヴェル・シリーズです。

 

「ザ・ボーダー」 あらすじ&レビュー

ザ・ボーダー5.0

メキシコを中心とした30年に及ぶ壮絶な麻薬戦争「犬の力」「ザ・カルテル」から続く3部作の最終章

 

あらすじ

麻薬カルテル組織(シナロアカルテル)のボス、アダン・バレーラ亡き後、その子供達の世代がボスの座を狙います。第3世代の世継ぎ争いが物語りの根幹です。

差し当たりアダンの右腕だった男(ヌニェス)がボスになるが、シナロアカルテルの3巨頭のそれぞれの息子達、リック、イバン、ダミアンにアダンの妹エレナ、エスパルサの警護隊長だったティトなど、5つ巴の様相となり世継ぎ争いが混沌としてくる。

そこに、第1世代の生き残りラファエル・カーロが絡んできます。

アメリカの合法化により大麻・コカインでの利益が厳しくなってきたカルテルは、ヘロイン市場に手を出し始める。

ニューヨークに蔓延するヘロイン流通を、ニューヨーク市警が囮捜査で調べる。大統領選に出馬する娘婿と麻薬資金が繋がっていることを突き止める。

シリーズ通して主人公であるアメリカの麻薬取締局(DEA)捜査官局長のアート・ケラーは、どう立ち向かっていくのか・・・

ヘロインの本場ニューヨークのおとり捜査、アメリカ麻薬商の刑務所内の話、グアテマラのスラムの少年のメキシコ〜アメリカへのロードノヴェルのような話、大統領選とカルテルとの裏の繋がり、メキシコカルテルからニューヨークのヘロインの流通など、様々な話が入っています。

アイリッシュ系でニューヨークのチミーノ一家と結託し殺し屋組織の頭目になったショーン・カランやアメリカ人で唯一カルテルのボスに昇りつめたことのある麻薬商エディ・ルイスなどお馴染みのキャラクターも登場します。

「ザ・カルテル」や序盤に頻繁に出てくるセータ隊は、実在するメキシコ最大の麻薬カルテル「ロス・セタス」のことです。

 

ザ・ボーダー

世界一危険な都市「シウダード・フアレス」サンディエゴとの国境の「ティファナ」メキシコ湾に近い「ヌエボラレド」の3つの主要な国境(ボーダー)などカルテルの勢力事情と国境事情はさみつつ

 

レビュー

大傑作でした。小説(架空の物語)を読んでいるのか、現実を読んでいるのかわからなくなるくらい、アメリカやメキシコの抱える現実の問題点などがわかる1冊だと感じました。

アメリカが陸続きのメキシコとの国境線を注視するように、メキシコもグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルからの流入問題が切実だという現実問題がわかりました。

アメリカとメキシコの麻薬問題と世の中の実情社会問題を読んでいるようですごくよかったです。

「犬の力」から続くカルテル組織の第3世代の新たな世代が中心ですが、最終章にふさわしく前2作を凌ぐ面白さだと思いました。

上巻後半の会合は、ゴッドファーザーのようで非常に面白い

出来事や人名は架空にしても、実在する組織や街の描写、アメリカとメキシコの関係、グアテマラの現状など、ほぼ現実に近い感じなんだろうと思いました。

上巻だけで765ページ、上下巻で1570ページあります。