アフリカが舞台(または作家)の小説をまとめています。
アパルトヘイト関連など、様々な社会問題、情勢、国事情を含んだ小説があります。
アフリカ文学の翻訳小説としてもおすすめの本です。
エジプトが舞台の小説
「張り出し窓の街」 ナギーブ・マフフーズ(著)
[1988年] アラブ圏初の【ノーベル文学賞】受賞作家
エジプト作家によるカイロ3部作の第1弾です。
この3部作は、日本翻訳出版文化賞なども受賞しています。
カイロの街を歩きたくなる大河小説。「欲望の裏通り」「夜明け」へと続きます。
初訳「ミダック横町」も発売済みです。
1940年代のカイロの下町に生きる人々を描いたカイロの路地裏の情景。
「メナハウス・ホテルの殺人」 エリカ・ルース・ノイバウアー(著)
[2020年] 【アガサ賞デビュー長編賞】受賞作
エジプトの高級ホテルで起こる事件を描く旅情溢れるミステリ
1926年、エジプト。若くして寡婦となったアメリカ人のジェーンは、エジプトのカイロにあるメナハウス・ホテルに旅行で来ていた。しかし、若い女性客が客室で殺され、ジェーンは地元警察に疑われてしまうが!?・・
「ファラオの密室」 白川 尚史(著)
2024年(第22回)このミステリーがすごい!大賞 受賞作
紀元前1300年代前半、古代エジプト
神官・セティは、死んでミイラにされたが、心臓が欠けているため、冥界の審判を受けることが出来ない。期限は3日、心臓を取り戻すため、地上に舞い戻る。やがて、棺に収められた先王のミイラが、密室状態のピラミッドから消失し、大神殿で発見されたという、もう一つの謎に直面し!?ーー
「エジプト人 シヌヘ」 ミカ・ヴァルタリ(著)
古代エジプト文明が克明に描かれた歴史小説
ファラオ、神官など、史実に基づく世界的ベストセラー
古代エジプト文明の新王朝時代末期に生まれた主人公・シヌの一代記。テーベで医師になり、シリア、バビロン、ヒッタイト、クレタ島への壮大な旅が始まる!ーー
南アフリカが舞台の小説
「約束」 デイモン・ガルガット(著)
【2021年】英国ブッカー賞 受賞作
南アフリカ。アパルトヘイトの社会変革の渦中。プレトリアで農場を営む白人家族と黒人メイドの土地所有権をめぐる約束が、40年に渡り運命を翻弄する・・ アフリカ文学最先端の1冊。
「恥辱」 J・M・クッツェー(著)
[1999年] 英ブッカー賞 受賞作
ノーベル文学賞作家で、2度のブッカー賞受賞作家でもあるJ・M・クッツェーは、南アフリカ出身の作家です。
リアリズム小説と言われる小説のスタイルを得意としていて、南アフリカの辿ってきた歴史を浮き彫りにした著作などがあります。
1983年には「マイケル・K」でブッカー賞を受賞しています。
傑作と言われている「鉄の時代」や「夷狄を待ちながら」、「敵あるいはフォー」などの作品も。
「アパルトヘイトの残滓」 竹中 寛(著)
2000年代の南アフリカが舞台の社会派ビジネス小説
アパルトヘイト(人種隔離政策)廃止から10年が経ち、黒人の地位向上に腐心する南アフリカ。
南アフリカの状況から見えてくる世界のリアル。
「流血のサファリ」 デオン・マイヤー(著)
ATKV賞ベスト・サスペンス小説賞 受賞作
南アフリカ・ミステリの最高峰とも言われる1冊。
コンサルタント業を営む美女、エマ・ルルーは、プロのボディガード、レマーを雇う。クルーガー国立公園近くの銃撃事件の容疑者が20年前に失踪した兄ではないかという。。レマーは、エマと共に兄を捜しにリンポポ州に向かうが!?・・
「血のケープタウン」 ロジャー・スミス(著)
南アフリカ・ノワール
ケープタウンにやってきたアメリカからの逃亡犯ジャック。しかし、自宅に押し入った強盗を殺してしまう。。エリート内部捜査官、悪徳警官、元ギャングなどを巻き込み、運命が破局へ向かうが!?・・
南アフリカという国のダークサイドが見え隠れする1冊。
「ZOO CITY 【ズー シティ】」 ローレン・ビュークス(著)
[2011年] アーサー・C・クラーク賞 受賞作
南アフリカのヨハネスブルグが舞台の都市SF
猥雑な南アフリカのスラムやカルチャーなど.. 特殊能力を持つ、獣を連れた人々が暮らす街で起こった奇妙な事件とは!?・・
ナイジェリアが舞台の小説
「マイ・シスター、シリアルキラー」 オインカン・ブレイスウェイト(著)
ナイジェリア作家によるブラックユーモアのあるサスペンスです。
全英図書賞、アンソニー賞など、ミステリ賞四冠のベストセラー
「パープル・ハイビスカス」 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(著)
ナイジェリアのエヌグが舞台
15歳の少女カンビリは、軍事政権の時期、叔母の家に預けられる。カトリックや厳格な父親の圧制から自己を肯定していく少女の成長物語。
ナイジェリアの政情、社会が垣間見れる新人作家の自伝的な小説
ラゴスからアメリカに移民した主人公の前作「なにかが首のまわりに」もアフリカの抱える問題が見えてくる作品です。
「ぼくらが漁師だったころ」 チゴヂィエ・オビオマ(著)
ナイジェリアを舞台にしたリアリズム小説
アフリカ文学の新星が家族の崩壊を書いた物語です。
複雑なナイジェリア情勢や歴史を照らし合わせ、家族崩壊の物語を描いています。
解説からも勉強になる要素がありました。
モロッコが舞台の小説
「タンジェリン」 クリスティン・マンガン(著)
モロッコのタンジール(タンジェ)が舞台のサスペンス
アフリカ最北端に位置し、ジブラルタル海峡の向こうにはスペインの最南端が見えるタンジール(タンジェ)
「匿名作家は二人もいらない」 アレキサンドラ・アンドリューズ(著)
心理サスペンス
作家志望のフローレンスと売れっ子作家のヘレンは、モロッコに取材旅行に行くが予想外の展開に!?・・
モロッコの雰囲気や風景描写も楽しめる1冊。
「シェルタリング・スカイ」 ポール・ボウルズ(著)
ベルナルド・ベルトルッチの映画「ラストエンペラー」に始まる3部作「シェルタリング・スカイ」の原作です。
北アフリカのモロッコやサハラ砂漠を舞台にした幻想的な物語。
コンゴが舞台の小説
「もうすぐ二〇歳」 アラン・マバンク(著)
コンゴの大都市ボワント=ノワ ールが舞台の自伝小説
1970年代後半、12歳の少年ミシェルの周りで起こる波瀾や出来事。自国は、マルクス・レーニン主義一党独裁体制。ラジオからは、テヘランアメリカ大使館人質事件などのニュースが流れる。。
著者の青春の思い出を下敷きに、不思議な体験を描く1冊。
「闇の奥」 ジョゼフ・コンラッド(著)
名作「ロードジム」で知られる作家ジョゼフ・コンラッドの傑作
コンゴを舞台に著者自身の実体験をもとにした作品。大自然の魔性と植民地主義の闇。
舞台は違いますが「地獄の黙示録」で映画化
19世紀末、船乗りマーロウは、アフリカ大陸の中央部に派遣される。奥地出張所に象牙貿易で業績を上げた社員の噂を耳にし、大密林を分け入り、最奥地にたどり着くが!?・・
「ケルト人の夢」 マリオ・バルガス=リョサ(著)
ノーベル文学賞作家の一大叙事詩
ノーベル文学賞受賞後、第一作目となります。
1916年、大英帝国の外交官だった男は死刑にされるが、植民地主義の恐怖を暴いた英雄であった。。
舞台はアイルランドというより、コンゴやアマゾンが中心ですが、掲載しました。 フィクションと事実がおりなす物語。
「禁断領域 イックンジュッキの棲む森」 美原 さつき(著)
パニックサスペンス
大学院で霊長類学を研究する季華。研究室に、コンゴの道路建設に関するアセスメントへの協力依頼が米国企業から舞い込む。調査隊は、ボノボの生息地を目指し、コンゴの大地を進む。しかし、調査地付近の村で、人々は何者からに殺され!?・・ 霊長類学の聖地で何が!?・・
その他、アフリカ大陸の国が舞台の小説
エチオピア
「影の王」 マアザ・メンギステ(著)
エチオピア人作家によるエチオピアの女性兵士達の物語
1935年、エチオピア。孤児になった少女ヒルトは、将軍の家にお手伝いとして匿われる。そんな折、ムッソリーニ率いるイタリア軍の侵攻の足音が近づいてきて!?・・
タンザニア
「楽園」 アブドゥルラザク・グルナ(著)
[2021年] ノーベル文学賞 受賞者
20世紀初頭、タンザニアを舞台に、少年ユスフの成長を描く小説。植民地や両大戦間時期の東アフリカ沿岸地域の歴史的な転換期。
1994年度ブッカー賞最終候補作
セネガル
「純粋な人間たち」 モハメド・ムブガル=サール(著)
【仏ゴンクール賞】受賞作家(2021年)の初邦訳作品
実際に起こった事件を題材に、セネガル社会のタブーに切り込んだ衝撃作。
セネガル人の若き文学教員は、ある日、ネット上に拡散されている動画を目にする。。同性愛者の疑惑をかけられ死んだ男性の墓を人々が暴いている様子だった。彼は、掘り返された男性を調べるうちに、思いもしない真実が見えてくる!?・・
セネガル人作家による人間の暴力性と排訴の恐怖を描いた作品。
ガーナ
「ガーナに消えた男」 クワイ・クァーティ(著)
[2021年] シェイマス賞新人賞 受賞作
アフリカ大陸の西部ガーナが舞台のミステリ
フェイスブックで知り合った女性に会うため、アメリカ男性がガーナへ行くが行方不明に・・。その息子がガーナにある探偵事務所を訪れる。。新米女性探偵が捜査を進めるうち、サカワ・ボーイズ」という呪術師に操られる詐欺集団の存在が!?・・
灼熱のガーナの実態(雰囲気)を味わえる1冊。
ケニア
「ナイロビの蜂」 ジョン・ル・カレ(著)
スパイ小説の巨匠「ジョン・ル・カレ」のミステリ小説
映画化もされています。ケニアのナイロビが舞台
ケニア駐在の英国人外交官の妻が死体で発見される。ナイロビの英国高等弁務官事務所に勤める外交官ジャスティンは、真相解明の乗り出すが!?・・
ジンバブエ~
「あたらしい名前」 ノヴァイオレット・ブラワヨ(著)
PEN/ヘミングウェイ賞 受賞作
ケイン賞(アフリカ文学の短篇に与えられる賞)
ジンバブエからアメリカへ移り住む少女。
著者のジンバブエでの子供時代とアメリカでの日々を描いたデビュー作。
アンゴラ
「過去を売る男」 ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ(著)
[2007年] インディペンデント紙外国文学賞 受賞作
アンゴラの名手によるボルヘス、カフカ、ペソーアを彷彿とさせる物語
アンゴラの首都ルアンダ。古書店主の家に棲みついた1匹のヤモリが語り出す。フェリックス・ヴェントゥーラの生活を観察し、長年にわたる激しいアンゴラの内戦が残した深い傷痕を軽妙にミステリアスに混ぜながら。。
アルバーティア
「狂った宴」 ロス・トーマス(著)
「愚者の街」で、<ハヤカワ>ミステリが読みたい!2024年版【海外篇】第1位など、話題となったロス・トーマスの初訳
アフリカ諸国の選挙戦など政治的カオスを描いた傑作。
MWA(エドガー賞)最優秀新人賞受賞作「冷戦交換ゲーム」に続く第2作目
サハラ砂漠
「サハラの薔薇」 下村 敦史(著)
サハラ砂漠が舞台のサバイバル冒険小説
冊子も薄めで、いっき気読みできるタイプの小説です。
フランスとアルジェリアの関係などのプチ情報とミステリ要素があり、面白かったです。
考古学者が乗った飛行機がサハラ砂漠に落ち、生存者中から6人でオアシスを目指すが・・
恥辱 【あらすじ&レビュー】
「恥辱」 J・M・クッツェー(著)
ブッカー賞受賞作
アパルトヘイト撤廃後の南アフリカ情勢を背景に、ひとりの男の転落の物語
レビュー
現在の南アフリカの社会的、政治的、経済的諸問題が少しわかりました。
物語は読みやすく、悲惨さを感じない軽さです。
内容的には明るいテーマという感じではありませんが、暗い気持ちになる小説ではなく、悲壮さもあまり感じない読後感となりました。
切ない恋愛ともとれますが、現代にも通ずるセクハラ・パワハラ問題の闇というテーマも含んでいます。
冊子が薄くいっき読みタイプの読みやすさでした。
リアリズム小説とは!?
リアリズム小説とは、小説というフィクションの中にあって、リアリティーが含まれている小説のことを言います。
現実と異なる世界を作り上げている小説に、非現実的な嘘ではなく、リアリティーが求められるのがリアリズム小説の特徴です。
例えば、南アフリカ出身のJ・M・クッツェーの作品では、人種問題、アパルトヘイト政策など、現実社会の問題点を浮き彫りにしています。