ロシアや旧ソ連が舞台の小説(ミステリ、スパイ、警察小説)をまとめています。
ロシア(ソ連)の小説は、冷戦絡みのミステリーやスパイ小説、警察小説が多いように感じます。
読了本のレビューやロシア文学、作家についても記載しています。
ロシア(旧ソ連)が舞台の小説 【近刊中心】
「クレムリンの魔術師」 ジュリアーノ・ダ・エンポリ(著)
【2022年】バルザック賞 受賞作
[2022年] 仏ゴンクール賞 最終選考作品
プーチンの「演出家」の告白をもとにした政治小説
「ウクライナ戦争はなぜ起きた?」ロシア権力の歴史をリアルに描く。
2022年のゴンクール賞受賞作「Vivre vite」ブリジット・ジロー(著)との最終選考では、真っ二つに別れ難航したそうです。13回もの投票で惜しくも受賞を逃しましたが、評価されている証拠かもしれません。
「ドクトル・ジヴァゴ」 ボリス・パステルナーク(著)
ソ連において発禁処分となり、1958年に、自身の承諾なしに海外で出版され、ノーベル文学賞を受賞しました。
しかし、ソ連の迫害により辞退。
2020年の各種ミステリランキングで上位にランクインしている「あの本は読まれているか」の題材にもなっています。
「モスクワの伯爵」 エイモア・トールズ(著)
全米140万部突破
1922年モスクワ、革命政府により高級ホテルに軟禁されるロシア貴族。
ロシアが舞台のミステリ、スパイ、警察小説
「チャイルド44」 トム・ロブ・スミス(著)
英国推理作家協会イアン・フレミング・スチール・ダガー賞 受賞作
このミステリーがすごい!2009年版【海外編】第1位
スターリン政権下、実際にあった連続殺人から着想を得たミステリ小説。
3部作品で「グラーグ57」「エージェント6」の続編があります。
スターリンの粛清時代やアフガン侵攻など、ソ連の現代史が満載で傑作です。
「ゴーリキー・パーク」 マーティン・クルーズ スミス(著)
英国推理作家協会(CWA)賞ゴールド・ダガー賞受賞作
東西冷戦時代、共産主義のソ連、モスクワが舞台の傑作警察小説。
鉄のカーテンに閉ざされた旧ソ連社会の暗部が浮かびあがる
「イコン」 フレデリック・フォーサイス(著)
軍事ミステリの巨匠フレデリック・フォーサイスの大型スパイスリラー
混迷する近未来ロシアを描く
「レッド・スパロー」 ジェイソン・マシューズ(著)
秀逸スパイもの。映画化もされています。
女スパイを意味するレッドスパロー、その苦闘とスパイ活動が面白い小説です。どんでん返しなどでの終盤の衝撃も
「墜天使殺人事件」 ボリス・アグーニン(著)
舞台は19世紀末モスクワ、ベストセラー作家の歴史推理小説
日本語の「悪人」から由来する「アクーニン」のペンネーム
「崩壊の森」 本城 雅人(著)
ソ連崩壊時のテーマを絡めたサスペンス
諜報、駆け引き、罠など、魑魅魍魎が渦巻くソ連崩壊前夜!?・・
世界的スクープであるソ連崩壊を報じた斎藤勉がモデル
【あらすじ&レビュー】
「サンクトペテルブルクから来た指揮者」 カミラグレーベ&ポールレアンダエングストレーム(著)
2017年&2019年「ガラスの鍵賞」受賞作家の邦訳
2003年頃の好景気に沸くロシアを舞台にした金融系バイオレンスサスペンス
新興財閥とロシアの関係、巨大国家の裏側。ロシアの情報を挟みながら黒幕探しがミステリ的にも面白かったです。
骨太でおすすめです。チェチェン問題なども勉強になりました。
「血の葬送曲」 ベン・クリード(著)
2001年 英国推理作家協会賞 ゴールド・ダガー賞 候補作
1951年、スターリン政権下のレニングラードが舞台の警察小説
スターリン恐怖政治下、線路に並べられた5つの死体。元ヴァイオリストという過去を持つ人民警察の主人公が連続殺人犯を捜査するが・・
レビュー
人民警察官として犯人捜査をする主人公ですが、時代背景からMGB(国家保安省)の存在が背後にある緊張感のあるミステリでした。
謎解きとしてはイマイチでしたが、当時のMGB長官・ベリヤやスターリンの後継となるマレンコフ、作曲家、指揮者など実在の人物とフィクションが入り混じった物語となっています。
交響曲など音楽系の色が強く、音楽ミステリと言えるかもしれません。
ナチスドイツによるレニングラード(現サンクトペテルブルグ)包囲戦の悲惨さ(飢餓など)は、図書館キャンディ(図書館の糊を舐めていた)という言葉がある程、悲惨な状況だったことがわかります。
「モスクワ・コネクション」 ロビン・ムーア(著)
事実に基づいた骨太クライムノベル
マフィア、秘密警察、政治家、CIA、民警入り乱れる感じが壮大です。
「屍肉」 フィリップ・カー(著)
サンクトペテルブルグを舞台にしたハードボイルド警察小説
90年代前半に復活、興隆してきたロシアマフィアが中心。
終盤にきて意外な深みが増してきて予想以上に面白かったです。
直木賞作家で「新宿鮫」の作家・大沢在昌さんもおすすめしていました。
ロシア文学と作家【古典】
「父と子」 ツルゲーネフ(著)
プーチンが礼賛する文豪の代表作
ロシア文学の古典で、農奴解放前後と民主的文化の新時代への流れを描いた名作です。
父と子を通し、新旧の思想的価値観のぶつかりなど、帝政ロシアの世代間相克が哲学的背景を交えながらわかります。
「犬の心 怪奇な物語」 ミハイル・А・ブルガーコフ(著)
巨匠・ブルガーコフの発禁になっていた問題作
レーニンの死から1年後に執筆。ペレストロイカまで、ソ連国内では62年間発禁となっていた1冊です。
他の作品では「巨匠とマルガリータ」などが有名です。
「チェヴェングール」 アンドレイ・プラトーノフ(著)
第9回(2023年)日本翻訳大賞 受賞作
20世紀、ロシア文学の傑作
湖に自ら身を投げ出した父親の息子アレクサンドル(サーシャ)は、ポリシェビキとして親友のコピョンキンと共に、共産主義を探して放浪し、共産主義の完成した理想郷・チェヴェングールを見出すが!?--
20世紀小説の最高峰のひとつとも言われています。
その他の有名作家
5人のノーベル文学賞受賞者、ブーニン、パステルナーク、ショーロホフ、ソルジェニーツィン、ブロツキーが知られています。
ロシア文学は、ドストエフスキーやプーシキン、トルストイ、ナボコフなど文豪が多く、文学的な小説も豊富です。
文豪ドストエフスキーの作品には、「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」「白夜」、自信のシベリア流刑の経験を書いた自伝のような「死の家の記録」「地下室の手記」などがあります。
プーシキンは、「大尉の娘」や「オネーギン」が有名です。
ウラジミール・ナボコフは、「ロリータ」という言葉を生んだ「ロリータ」や「賜物」などの著作があります。