戦争文学や戦時下のミステリ、スパイ小説などをまとめています。
その中でも比較的、近年の小説を中心に掲載しています。
※ 独立戦争や内戦ものを除き、第1次、2次大戦関連の小説を掲載。
戦争文学・戦争小説
第二次世界大戦
「誉れの剣 ~つわものども~」 イーヴリン・ウォー(著)
戦争文学の金字塔的作品3部作
第二次世界大戦を描いた英国小説の最高峰。
うだつのあがらない主人公ガイ・クラウチバック。妻と離婚し、35歳で軍隊経験のない中年男が入隊を希望する。難しい状況の中、何とか見習士官として入隊したホルバディアーズ(矛槍兵)連隊は、伝統ある隊で戦地へ向かう準備を始めるが!?・・
コメディの脚本家というだけあり、ブラックユーモアとは言わないまでも、どこか滑稽で悲惨さをあまり感じない戦争小説であるようにも感じました。
第3作目「無条件降伏:誉れの剣Ⅲ」が2023年1月に発売されました。
「同志少女よ、敵を撃て」 逢坂 冬馬(著)
2022年【本屋大賞】受賞作
2021年(第11回)アガサ・クリスティー賞大賞受賞作
キノベス!2022【第1位】(紀伊国屋書店スタッフがおすすめする)
[2022年] 高校生直木賞受賞
1942年、モスクワ近郊に暮らす少女セラフィマ。独ソ戦が激化する戦時下、急襲したドイツ軍により母親を含む村人達が惨殺される。。
その後、彼女は復讐のため、一流の狙撃兵になることを決意する。やがてスターリングラードの前線へと向かうが!?・・
「鷲は舞い降りた」 ジャック・ヒギンズ(著)
戦争冒険小説の傑作
イギリスの東部、ノーフォークの村に降り立ったドイツ落下傘部隊の精鋭達。
ヒトラーの蜜命により、イギリス兵になりすましチャーチル首相の誘拐を目論むが!?・・
「永遠の0」 百田 尚樹(著)
百田尚樹の傑作 戦争小説
特攻隊となり命を落とした祖父を調べるうち、戦争の様々な葛藤が見えてくる。映画化済みの小説です。
終戦から60年目の夏。健太郎は祖父の生涯を調べ始める。祖父のイメージと違う人物像を探りながら、祖父の人生を通して各地の日本軍の戦いも浮き彫りに・・
「二つの祖国」 山崎 豊子(著)
社会派小説家の山崎豊子の戦争を絡めた小説です。
第2次世界大戦を背景にした文学作品
真珠湾攻撃、広島原爆、東京裁判まで、日系アメリカ人の視点から描かれた大河巨編。
戦争によって2つの祖国の狭間での葛藤。
「また、桜の国で」 須賀 しのぶ(著)
第4回(2017年)高校生直木賞 受賞作
ポーランドの第2次世界大戦の様子を描いた小説
1938年、外務書記生の棚倉慎は、ポーランドの日本大使館に着任する。ナチス・ドイツの脅威からポーランド孤児達のつくった極東青年会と協力しながら戦争回避に奔走するが!?・・
20万人の犠牲者が出たワルシャワ蜂起などポーランドの苦難の歴史。。
第一次世界大戦
「戦争とテレピン油」 ステファン・ヘルトマンス(著)
[2016年] ニューヨーク・タイムズ年間ベスト10
第一次世界大戦を絡めた戦争文学
1981年に世を去った祖父は、半生を2冊のノートに綴っていた。戦争の記憶とその生涯を。気高く美しい母をーー
「アンの娘リラ」 L・M・モンゴメリ(著)
「赤毛のアン」シリーズ完結【第8巻】日本初の全文訳
アンの娘・リラの視点で描く戦争と戦後の暮らし
アン48歳。第一次大戦により、息子3人が兵隊として欧州の戦場へ。家族の無事を祈りながら、赤十字の活動をするが!?・・
ナチス・ドイツ関連
「HHhH(プラハ、1942年)」 ローラン・ビネ(著)
[2010年] ゴンクール賞(仏)最優秀新人賞受賞作
[2014年] 本屋大賞【翻訳部門】第1位
ナチス第3の男「金髪の野獣」と呼ばれ、ナチス・ドイツのユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)の責任者だったラインハルト・ハイドリヒと彼の暗殺者である2人の青年を扱った歴史小説。
本書にも記載どおり、実験的な試みを行なった小説としての構成も面白い作品です。
フィクションとノンフィクションを織り交ぜた文学的な1冊。
「その日の予定――事実にもとづく物語」 エリック・ヴュイヤール(著)
[2017年] ゴンクール賞(仏)受賞作
事実に基づく物語で、ノンフィクション小説
1938年、第2次大戦前夜のナチスドイツのオーストリア併合に至る舞台裏
ナチスの高官と経済界のトップらとの秘密会合。
「慈しみの女神たち」 ジョナサン・リテル(著)
[2006年] ゴンクール賞(仏)受賞作
元ナチスの親衛隊将校が、スターリングラード攻防戦、ホロコーストについて回想し、語られるフィクション小説
実在の人物や史実も織り交ぜ、賛否両論を巻き起こした1冊。
「オデッサファイル」 フレデリック・フォーサイス (著)
フレデリック・フォーサイスのナチス関連ものサスペンススリラー
オデッサ=元ナチス親衛隊によって構成される「秘密組織」
元SS高級将校を追い、この組織に単身挑むジャーナリストのペーター・ミラー。虚実入り混じる追逃走劇。
ナチス戦犯の存在、ネオ・ナチズムなどの背景も。
「ローズ・コード」 ケイト・クイン(著)
「戦場のアリス」「亡国のハントレス」の作家の最新作
第二次大戦下の英国。ドイツの暗号化解読にのぞむ女性達の物語。裏切り者は誰なのか!?・・
「黄金列車」 佐藤 亜紀(著)
2020年【第10回】Twitter(ツイッター)文学賞 第1位
実在した「黄金列車」をテーマにした小説
第二次世界大戦末期、ユダヤ人から没収した国有財産を守るべく、ハンガリーからオーストリアへ黄金列車は走る。
ハンガリー王国大蔵省のバログは現場担当として黄金列車に乗り込むが、列車が進む中、資産目当てに悪党らが近づいてくるが!?・・
登場人物の多くは実在の人物
日本軍 関係
「いくさの底」 古処 誠二(著)
[第71回](2018年) 日本推理作家協会賞 受賞作
ビルマ北部(現:ミャンマー)の駐屯地で起きる戦地ミステリ
東南アジアでの日本軍の状況などもあり、戦争とミステリを両方求めている方にはおすすめです。
冊子も比較的薄く、いっき読みできるタイプの小説です。
「奥のほそ道」 リチャード・フラナガン(著)
[2014年] ブッカー賞(英)受賞作
タイとビルマを結ぶ「泰緬鉄道」(別名:「死の鉄路」と言われる)を題材にした戦争小説の傑作。
1943年、オーストラリア軍の軍医として太平洋戦争に従軍するドリゴ。しかし、その後、日本軍の捕虜となり「泰緬鉄道」建設の過酷な重労働につく。時と場所を交差させ、戦争で人生を狂わされた者達など、人間の複雑さを描く傑作。
「夕霧花園」 タン・トゥアンエン(著)
マン・アジア文学賞(現代アジア文学で最も優れた小説に贈与)受賞作
日本とマレーシアの歴史(日本のマレーシア侵略と占領)が描かれるラブ・ストーリー
第2次大戦中の日本とマレーシアが舞台の戦争を背景にした小説です。
1980年代マレーシア。元連邦裁判所判事のテオ・ユンリンは、キャメロン高原の日本庭園「夕霧」を訪れる。そこは30年前に天皇の庭師だった日本人、アリトモに弟子入りした場所だった・・
ヴェトナム戦争関連
「シンパサイザー」 ヴィエト・タン・ウェン(著)
[2016年] ピュリツァー賞 受賞作
エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀新人賞
ヴェトナム系アメリカ人作家によるヴェトナム戦争絡みの小説。
ヴェトナム戦争や植民地主義に翻弄された元スパイと義兄弟達。
第2作目の「革命と献身 シンパサイザーII」も発売されています。
「煙の樹」 デニス・ジョンソン(著)
[2007年] 全米図書賞受賞作
ヴェトナム戦争の情報作戦をネタにした大作
多くの登場人物、骨太なページ数、決して読みやすいわけではないが、泥沼化するヴェトナム戦争の不条理、救いのなさが見えてくる小説。
《 煙の樹 》と呼ばれる情報作戦とは!?・・
イラク戦争
「一時帰還」 フィル・クレイ(著)
[2014年] 全米図書賞 受賞作
戦争の愚かさ、悲しみなど、戦場の現実を突き付けられる戦争文学。
海兵隊員として戦場の最前線を経験した著者が描く、戦闘地域だけでなく帰還兵にも直面する戦争の残酷さ。
「イエロー・バード」 ケヴィン・パワーズ(著)
[2013年] PEN/ヘミングウェイ賞受賞作
ガーディアン新人賞受賞
自身もイラクに派遣された著者によるイラク戦争小説のデビュー作。
イラク、アル・タファル。21歳の兵士バートルと18歳の初年兵マーフィーは、過酷な戦場での体験で心が壊れていくが!?・・
イラク戦争で直面した若者達の感情など、戦争の惨さを感じる小説。
湾岸戦争
「神の拳」 フレデリック・フォーサイス(著)
1991年に勃発した湾岸戦争のリアルなハーフフィクション
軍事ミステリーの巨匠フレデリック・フォーサイスの小説
多国籍軍は、イラクの戦力を把握していた--しかし、そんな折、最終兵器「神の拳」の存在を知る。神の拳とは何か!?・・
戦争関連のミステリ&スパイ小説
「真珠湾の冬」 ジェイムズ・ケストレル(著)
[2022年] エドガー(アメリカ探偵作家クラブ)賞 最優秀長編賞 受賞作
1941年、ハワイで白人男性と日本人女性の惨殺事件が起きる。。アメリカ人の刑事は容疑者を追い、ウェーク島を経由し、香港、日本に辿り着くが、太平洋戦争の勃発に遭遇する・・
ミステリ、恋愛、スパイ、戦争要素が入り混じり、壮大な物語です。
真相を求め、戦渦の太平洋諸国を彷徨う男を描いたおすすめ小説。
「われらが痛みの鏡」 ピエール・ルメートル(著)
両大戦間3部作のシリーズ最終作
「その女アレックス」など、フレンチミステリの重鎮ピエール・ルメートルの傑作。
1940年のフランス。戦時下の状況がリアルに描かれた傑作。運命に翻弄される人々の姿。
1作目「天国でまた会おう」は、ゴンクール賞(仏最高の文学賞)受賞作。
2作目となる「炎の色」は、第2次大戦前のフランスから始まる話。
「針の眼」 ケン・フォレット(著)
[1979年] アメリカ探偵作家クラブ(エドガー)賞 受賞作
「大聖堂」で知られる巨匠ケン・フォレットの傑作スパイ小説
第2次大戦下、史上最大のノルマンディー上陸作戦を絡めた物語。
上陸地点は、ノルマンディーか!?カレーか!?
1945年、イギリスに潜入したドイツのスパイ、コードネーム:針「ニードル」。重大機密をヒトラーに報告するため、祖国を目指す。Uボートの待つ海に船を出したが!?・・
「戦下の淡き光」 マイケル・オンダーチェ(著)
ゴールデン・ブッカー賞(ブッカー賞50周年の最優秀作品)「イングリッシュ・ペイシェント」で知られる作家の戦時下スパイミステリ。
語り口が穏やかで、文体の美しい小説です。
普通の文学的な作品のため、戦争小説とは若干ずれますが、戦時下の出来事に思いを馳せる小説です。
「戦場のアリス」 ケイト・クイン(著)
「本の雑誌が選ぶ2019年度文庫ベストテン」第1位
第1次世界大戦に実在した女スパイをモデルにした傑作歴史ミステリ
ドイツ占領下のフランス。「アリスネットワーク」という女性スパイ組織や実在した「ルイーズ・ド・ベティニ」の物語。
現代の女性がフランスを周り、いとこを探すロードノベルのような話と、その繋がりから見えてくる女性スパイの話が交互に進みます。
第2作目の「亡国のハントレス」も戦時下背景の歴史小説です。
第二次大戦時、ドイツ占領下のポーランドに”ザ・ハントレス”と呼ばれた殺人者がいた!?・・
「ベルリンは晴れているか」 深緑 野分(著)
2019年【第9回】Twitter(ツイッター)文学賞 第1位
このミステリがすごい!2019年版【国内編】第2位
第2次大戦直後のドイツが舞台の歴史ミステリ小説
1945年7月、ナチス・ドイツの敗戦によりベルリンは、米ソ英仏の4カ国の統治下におかれていた。
17歳のドイツ人少女アウグステは、恩人が青酸入りの歯磨き粉で殺されたことを知る。戦後の混乱期を背景に、アウグステは彼の甥に訃報を伝えに旅だつ・・
後作に、ノルマンディー降下作戦で初陣を果たした合衆国陸軍の特技兵19歳のティムを主人公にした「戦場のコックたち」も出版されています。
「サハリン脱走列車」 辻 真先(著)
日本ミステリ界の重鎮による戦時ハードボイルド
昭和20年8月。樺太(サハリン)を舞台に、終戦直前のソ連軍からの侵攻に耐えながらの冒険行。
時代に翻弄されながらサスペンスフルな箇所もあり、飽きずに読める小説。
終戦宣言の玉音放送の8月15日から9月のポツダム宣言まで2週間戦争の続くサハリンは、北からソ連の攻撃にさらされ続ける。
ノンフィクション
「二重スパイ コード・ネーム【ガルボ】: 史上最も偉大なダブル・エージェントがノルマンディ上陸作戦を成功に導くまで」 ジェイソン・ウェブスター(著)
第2次大戦で局面を決定づけた最も大事な戦いと言われている「ノルマンディ上陸作戦」
そのノルマンディ上陸作戦を成功に導いたスパイは2重スパイだった!?
英国軍の情報戦から見えてくるノルマンディ上陸作戦での勝利の全貌。
「戦争はオンナの顔をしていない」 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(著)
ウクライナ生まれのノーベル文学賞作家による戦争もの名作
第2次世界大戦。ソ連では100万人を超える女性が看護師や軍医として従軍した。。武器を手にとり兵士としても戦うが、戦後には世間から白い目で見られ、戦争体験を隠すことになる・・
そんな従軍女性500人以上から戦争の真実を聞く--
「ワイルド・ブルー:米爆撃隊 死の蒼穹」 スティーヴン・E・アンブローズ(著)
全米100万部のベストセラー。戦争ノンフィクションの名作
シリーズ〈人間と戦争〉第2弾
1943年。米陸軍航空軍に入隊した20歳のジョージ・マクガヴァンは、B-24爆撃機の操縦を任じられる。。9人のクルーと共に、ナチス・ドイツの空へと赴く・・
極限状態でのリーダーシップとは!? チームワークとは!?
「バルジ大作戦」 ジョン・トーランド(著)
ピュリッツァー賞受賞作家の描く欧州戦線の戦闘
シリーズ〈人間と戦争〉第3弾
1944年、敗戦濃厚なドイツ軍が最後の賭けに出た。。
「バルジ大作戦」と言われるヒトラー自ら構想の作戦が実行される・・
連合軍戦線はどうなる!?・・
「戦争広告代理店」高木 徹(著)
講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞
情報戦の実態がわかるノンフィクション
ユーゴ内戦でクロアチア外相が世界にふれまわり、PRすることでセルビア人をいかに悪のイメージに仕立てていったかという現実。
「情報を制する国が勝つ」情報操作とボスニア紛争
「鉄路の果てに」 清水 潔(著)
「桶川ストーカー殺人事件―遺言」「南京事件を調査せよ」などの著作で知られるジャーナリスト清水潔氏の戦後紀行
鉄道連隊だった父のメモを発見した著者が戦時中に父が辿ったシベリア鉄道の行動に沿って旅をする。
その行程で満州など中国大陸での日本軍の戦争を辿る。
中国・ロシアとの関係など、祖父に思いを馳せながら見えてくる戦争。