ディストピア小説と呼ばれるジャンルの小説を掲載しています。
ジョージ・オーウェルやカズオ・イシグロ、ウィリアム・ゴールディング、レイ・ブラッドベリなどの名作が多くあります。
近未来社会を舞台にしたSF小説としても、現代社会への批判としても楽しめるジャンルの小説です。
ディストピア小説とは!?
ディストピア(デストピア)の語源は、「悪い、困難な」を意味します。
ディストピア小説は、反自由的な社会否定的・反人間的な表現が多く、独裁や全体主義などの世界観が設定される傾向にあります。
近未来社会が批判的なSFで、現実批判などが底流に一貫しています。
ディストピア(英: dystopia)または逆ユートピア(英: anti-utopia)は、反理想郷・暗黒世界[1]、またはそのような世界を描いた作品[1]。
引用:Wikipediaより~
反ユートピアというと分かりやすいかもしれません。ダークファンタジーなどの分野も含まれるとのことです。
【ディストピア小説】おすすめ一覧
「一九八四年」 ジョージ・オーウェル(著)
20世紀世界文学の最高傑作
ディストピア小説、代表的作品の不朽の名作。
全体主義的近未来。「ビッグ・ブラザー」の党が支配する世界で、体制に不満を抱きつつも歴史の改竄を仕事にするウィンストン・スミス。ある時、美女のジュリアと恋に落ちたことを契機に、反政府地下活動に惹かれていくが!?・・
「すばらしい新世界」 オルダス・ハクスリー(著)
全てのディストピア小説の源流にして不朽の名作
2049年の最終戦争後、暴力を排除し「共生・個性・安定」をスローガンとする世界が形成される。。人間は受精卵の段階から瓶の中で培養され、5つの階級に分けられ管理・区別される。平和な安定史上主義の世界に、未開社会から来たジョンが起こす騒動により世界の矛盾が明らかに!?・・
「鐘は歌う」 アンナ・スメイル(著)
[2016年] 世界幻想文学大賞 受賞作
近未来ディストピアSF、幻想文学の名作
鐘の音が支配する世界。孤児サイモンは、住み慣れた農場を離れ、ロンドンに向かった。そこで、奇妙な白い眼を持つ少年、リューシャンに出会う。文字の代わりに、音で意思疎通するが!?--
「われら」 エヴゲーニイ・ザミャーチン(著)
ロシアのディストピア小説の先駆的名作
自由や個性が凍結された「単一国」に統治された世界。監視下に置かれながら生活する人々は、わたし(個人)はなく、われら(全体の一部)でしかない。自由時間以外は同一の日課を過ごす。。しかし、主人公はある女性と恋に落ち、個としての葛藤に気づく・・
「蠅の王」 ウィリアム・ゴールディング(著)
ノーベル文学賞作家の代表作
近未来の戦時下、少年達を乗せた飛行機が南太平洋の無人島に不時着する。。生き残った少年達は助けを待つことに決めるが、救援はなかなか来ない・・ 暗闇に潜むという”獣”に恐怖を感じながら、彼らは互いに牙をむき始め!?・・
21世紀版「15少年漂流記!?」とも言われる作品。
「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロ(著)
ノーベル文学賞作家によるダークファンタジー
メタファー(暗喩)を含んだディストピア文学。
介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムでは、奇妙な日々が思い起こされる。。親友のトミーやルースも「提供者」で、彼女の回想は次第にへールシャムの残酷な真実が明らかになっていくが!?-
「華氏451度」 レイ・ブラッドベリ(著)
「火星年代記」などSFの巨匠によるディストピア小説
読書が有害とされ、本が禁制品となっている全体主義的な近未来社会。考えること、記憶することを放棄している人々。。主人公のモンターグは、書物を焼き尽くす昇火士(ファイアマン)のひとりとして活動するが、1人の少女と出会い彼の人生が変わっていく!?ーー
「献灯使」 多和田 葉子(著)
全米図書賞(翻訳文学部門)受賞作
芥川賞やドイツのクライスト賞など多くの賞を受賞している著者による全5編からなる近未来小説集
震災後文学の頂点とも言われるディストピア小説
大災厄により、自動車もインターネットも外来語もなくなった鎖国状態の日本。。子供は学校に通う体力も無く、義郎は曾孫の無名が心配でならない。そんな無名が「献灯使」として日本から旅立つ運命に!?・・
日本人の全米図書賞の受賞は、1982年の「万葉集」、樋口一葉「たけくらべ」以来、36年ぶりの快挙となっています。
「侍女の物語」 マーガレット・アトウッド(著)
アーサー・C・クラーク賞受賞作
自由を奪われた近未来社会の人々を描くディストピア文学
ギレアデ共和国の侍女オブフレッドは、配属先の邸宅の主の司令官の子を産むことが役目。しかし、彼女は夫や娘と暮らしていた時代が忘れられない・・ 監視と処刑の恐怖に怯えながら逃亡の道を探す彼女に光が差し込むが!?・・
「侍女の物語」の続篇「誓願」も2019年ブッカー賞受賞の傑作です。
「ミルクマン」 アンナ・バーンズ(著)
[2018年] 英ブッカー賞 受賞作
国家独立に揺れる地のディストピア小説
1970年代、北アイルランドの首都ベルファストに生まれた18歳の少女。
北アイルランド紛争の過酷な情勢を背景に、狭いコミュニティの話。
「マッドアダム」 マーガレット・アトウッド(著)
2度のブッカー賞受賞作家の文豪、マーガレット・アトウッドの新作
ディストピア的な壮大な物語
謎のウィルスにより、ほぼ絶滅した人類。生き残ったのは、一握りの人々と人造人間クレイカー、残忍な凶悪犯達だった・・ 世界を破滅させたウィルスの正体は何だったのか!?--
「シュレーディンガーの少女」 松崎 有理(著)
SFが読みたい!ベストSF 2023【国内篇】第7位
ディストピア世界で生きる女性達を描いた短編集
健康至上主義社会。数学の使用を禁じ、刑を処す王国。全ての65歳にプログラムされた死が訪れる世界。「Zウィルス」によるパンデミックが起きた渋谷の街・・ 様々なディストピア世界で生きる、コミカルでダークな物語。
「グレイス・イヤー 少女たちの聖域」 キム・リゲット(著)
「侍女の物語」×「蠅の王」のポスト・ディストピア小説
16歳の全ての少女達は”魔力”があると信じられているガーナー郡。16歳になるとガーナー外に広がる森の奥のキャンプに追放される。。この風習について語ることは禁じられている・・ 16歳を迎えるティアニーが謎に包まれた通過儀礼<グレイス・イヤー>のサバイバルの果てに見た物とは!?・・
「最後の語り部」 ドナ・バーバ・ヒグエラ(著)
ニューベリー賞、プーラ・ベルプレ賞 受賞作
近未来ディストピアSF
13歳の少女ペトラは、崩壊目前の地球を脱出し、植民船で新天地を目指す。長い眠りの後、目覚めたのは、過去の記憶と想像力を失った世界!?-
ペトラは、物語を武器に戦う!?・・
「透明性」 マルク・デュガン(著)
仏ドゥ・マゴ賞受賞作家によるSF近未来ディストピア小説
2060年代、地球温暖化により、人類の生存場所は北欧地域のみになっていた。。そんな折、グーグルは新人類を創る計画を立てる。トランスバランス(透明性)社の元女社長は、個人データを人工体に移植するために手段を選ばず!?--
デジタル資本主義と環境問題をテーマに据えつつ。
「声の物語」 クリスティーナ・ダルチャー(著)
虐げられる女性達を描いたディストピアSF物語
全ての女性が1日100語以上、喋ることを禁じられた近未来のアメリカ。100語以上喋ると電流が流れる装置が手首につけられ・・
認知言語学者のジーンのもとに、ある日、大統領の側近達が現れる。脳に損傷を負った大統領の兄を治療する研究を依頼したいというのだが!?・・
「蜂の物語」 ラリーン・ポール(著)
蜂の巣の全体主義的社会を描いたディストピア文学
蜂の世界を主人公で働き蜂フローラの視線から見た物語。
フローラ七一七は、最下層の蜂として生を受ける。女王を崇めて、労働を厳重に管理される。巣の存続の危機が迫る中、女王蜂と巣のために働き続けるが!?・・
蜜蜂の実際の生態をもとにした階級社会。養蜂場の蜂の巣の世界。
「パワー」 ナオミ・オルダーマン(著)
[2017年] ベイリーズ賞(イギリスで権威ある賞)受賞作
究極のディストピア小説
ある日、世界中の女性に強力な電流を放つ力が宿り、女が男を支配する社会が生まれる!?--
「メトーデ 健康監視国家」 ユーリ・ツェー(著)
ドイツで110万部のベストセラーの近未来ディストピア小説
健康維持システム〈メトーデ〉が国民の生活を管理する。健康が義務となる中、身体の個人情報が筒抜けに!?・・
「サハマンション」 チョ・ナムジュ(著)
「82年生まれ、キム・ジヨン」著者の最新長編
韓国小説のディストピア文学
「82年生まれ、キム・ジヨン」は、韓国で136万部、日本でも23万部突破のベストセラーとなりました。
超格差社会「タウン」最下層に位置する人々が住むサハマンション。。少数者、非主流と呼ばれる人々。蜜入国者、老人、性少数者、障害者など、底辺で助け合いユートピアを模索することは可能なのか!?・・
「R帝国」 中村 文則(著)
キノベス! 2018年(紀伊國屋書店スタッフのおすすめベスト)第1位
アメトーーク! 「読書芸人」で紹介された1冊
全体主義の恐怖を描く近未来SFディストピア
近未来の島国・R帝国。人工知能搭載型携帯電話・HP(ヒューマン・フォン)の画面を常に見ながら生活している人々。矢崎は、R帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。国家を支配する絶対的な「党」という存在、謎の組織「L」。この国の運命は、幸福か!? 絶望なのか!?・・
「消滅世界」 村田 沙耶香(著)
「コンビニ人間」で芥川賞を受賞した著者のディストピア小説
「コンビニ人間」は、本屋大賞も受賞しています。
夫婦間の性行為が「近親相姦」としてタブー視されている近未来。。「セックス」が存在せず、人工授精で子供を産むことが定着している世界。。両親が愛し合った末に生まれた雨音は母親に嫌悪を抱きながらも夫と実験都市・楽園(エデン)に移住するが!?・・
「東京都同情塔」 九段 理江(著)
[2023年下半期] 芥川賞 受賞作
ディストピアをユーモラスに描いた現代版・バベルの塔
近未来。ザハハディド案の国立競技場が完成し、新しい刑務所「シンパシータワートーキョー」が建てられることになる。建築家の牧名沙羅は、仕事と信条で苦悩し!?・・
「横浜駅SF」 柞刈湯葉(著)
人類を「横浜駅」の支配から解放してほしいーー
自己増殖する「横浜駅」に支配されていた日本。脳に埋め込んだSuikaで管理されるエキナカ社会。その外で暮らすヒロトは、ある男から人類の未来を担う運命を課せられ!?・・
「残月記」 小田 雅久仁(著)
第43回(2023年)日本SF大賞 受賞作
月をモチーフとしたダークな中篇3編
ディストピア要素を含んだファンタジー
「そして月がふりかえる」「月景石」「残月記」の3作を収録。全体主義社会の理不尽さなどが浮き彫りになる。
まとめ
中には、難解と思われるディストピア小説もあります。
そんな小説を解説するEテレの番組「100分de名著」がテキストも販売しています。
名著などを紐解いて再読しても面白いかもしれません。