2022年3月15日(土)に「みんなのつぶやき文学賞」の受賞作が決定しました。
Twitter(ツイッター)文学賞の流れを汲み、2022年で2回目の開催となった文学賞の結果を掲載しています。
ランキング形式で掲載しています。
国内編
第1位: 36票
「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」 川本直 (著)
第73回 読売文学賞(小説賞)受賞作
ジュリアン・バトラーという架空の小説家。その謎の生涯とは!?--
20世紀のアメリカ文学史をカポーティ、トルーマンなど実在の人物と史実を絡めた傑作。
また、小説家志望の方など、文学の玄人にもおすすめといえる1冊。
第2位: 24票
「旅する練習」 乗代 雄介 (著)
第34回 三島由紀夫賞
サッカー本大賞2022優秀作品
叔父と姪のロードノベル
小説家の叔父は、中学受験の終わったサッカー少女と共に、我孫子~鹿島スタジアム周辺まで利根川沿いを歩く。
風景描写と言葉がしみる。 ページ↓下部に読了レビューも書いています。
第3位: 16票
「長い一日」 滝口 悠生 (著)
詩的な言葉の静かな小説。
引越しを考え始めた小説家の夫と妻。まわりの人々、長い付き合いの友人達、様々な記憶がかけがえのない時間を描く。
第4位: 14票
「残月記」 小田 雅久仁 (著)
「月」をモチーフに3編からなる中短編集
異世界に連れていかれるような筆力。
冒険小説、家族小説、ディストピア小説とも言える様々な要素が混在した物語。
第5位: 12票
「テスカトリポカ」 佐藤 究 (著)
2021年上半期[第165回] 直木賞受賞作
第34回 山本周五郎賞受賞作
メキシコのカルテルで麻薬密売人をしていたバルミロと川崎で生まれ育つ少年。2人は出会い、少年はいつの間にか犯罪に巻き込まれていくが!?・・
川崎とメキシコ、ジャカルタなど、世界を又にかけたクライムノヴェル
重厚感のある筆力と壮大なスケール
「感応グラン=ギニョル」 空木 春宵 (著)
全5編の短編集
昭和初期、浅草六区のアングラ劇団。
芝居小屋〈浅草グラン=ギニョル〉は、夜ごと少女達による残酷劇が演じられている・・
独特の世界観で幻想的なSF小説
第6位: 11票
「つまらない住宅地のすべての家」 津村 記久子 (著)
とある十軒の家が立ち並ぶ住宅地。
そこに、刑務所からの脱走犯が出たとのニュースが入る。
それぞれの生活と微妙な近所つきあいが変化していくが!?・・
第7位: 10票
「ほんのこども」 町屋 良平(著)
難解との声も多数ある私小説風フィクション
小説家の主人公が、元同級生のあべくんからのメールの文章から、あべくんの人生の小説家を試みる・・
第8位: 9票
「日々のきのこ」 高原 英理(著)
3つの短編からなる幻想きのこ文学!?
きのこが中心となっている世界観。
世界はキノコに侵食され、人間の数が徐々に減っていくという終末論。
第9位: 7票
「同志少女よ、敵を撃て」 逢坂 冬馬(著)
2022年【本屋大賞】受賞作
2021年 アガサ・クリスティー賞大賞受賞作
キノベス!2022 第1位
1942年、独ソ戦が激化する中、モスクワ近郊の農村に住む少女。ドイツ軍の急襲により母親を殺される。そんな少女は一流の狙撃兵を目指し、やがて前線のスターリングラードへ!?・・
アクションと緊迫感で読者を引き込む作品。
「山の人魚と虚ろの王」 山尾 悠子(著)
難解!?との声もある幻想文学
若い妻との新婚旅行。夜の宮殿、駅舎ホテル、機械の山?
イメージの世界がめくるめくやってくる「旅」の物語
第10位: 6票
「鴨川ランナー」 グレゴリー・ケズナジャット(著)
京都文学賞受賞作
中篇2本の作品。
主人公の米国青年は高校入学と同時に日本語を学び始める。語学旅行で四条大橋から鴨川を眺め、大学卒業後、京都で生活を始める。
そんな時、谷崎潤一郎の文学と出会うが!?・・
海外編
第1位: 18票
「消失の惑星【ほし】」 ジュリア・フィリップス(著)
全米図書賞 最終候補作
ロシアの秘境カムチャッカ半島が舞台の文芸作品
幼い姉妹の失踪を軸に、カムチャッカに生きる人々を描く小説。
ロシアのページに読了レビューも記載しています。
第2位: 16票
「三体Ⅲ 死神永生」 劉 慈欣(著)
中国SF小説の傑作シリーズ第3弾
「三体Ⅱ~」「三体Ⅱ~黒暗森林~」に続く作品。
アジア作家として初めてヒューゴー賞(SF最大の賞)を受賞した著者の作品。
第3位: 11票
「蛇の言葉を話した男」 アンドルス・キヴィラフク(著)
バルト三国のエストニア発のファンタジー小説
第4位: 10票
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」 アンディ・ウィアー(著)
「火星の人」の著者による極限のSF小説
地球上の全生命滅亡まで30年。宇宙船「ヘイル・メアリー号」でたったひとりで目を覚ます主人公だが!?・・
「シブヤで目覚めて」 アンナ・ツィマ(著)
マグネジア・リテラ新人賞(チェコ最大の文学賞)
チェコの作家による新世代幻想小説
チェコで日本文学を学ぶ主人公。その主人公の分身は渋谷をさまよい歩いているが!?・・
プラハと東京が2つの時間軸で展開する物語
「星のせいにして」 エマ・ドナヒュー(著)
パンデミック小説の金字塔
1918年、アイルランド・ダブリン。第一次世界大戦とスペイン風邪の大流行。
どこか現在の状況とかぶる設定の中、出産を控える妊婦に対し、看護師、医師、ボランティアの3人の女性が奮闘する・・
第5位: 9票
「複眼人」 呉 明益(著)
現代台湾文学を代表する作家の最新作
「自転車泥棒」「歩道橋の魔術師」などの作品でも知られる呉明益の生と死が交錯する感動物語。
次男が生きられない神話の島から追放された少年、自殺寸前の大学教師、母、妻を失った先住民の男女、環境保護を訴える海洋生態学者。様々な運命が巨大な「ゴミの島」を前に重なり合う!?・・
第6位: 8票
「クララとお日さま」 カズオ・イシグロ(著)
ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの受賞後第一作
AIロボットと少女との友情を描く感動作。
ロボット視点から語られる文章。感情を持ったロボットの切ない気持ちが伝わってくる傑作。
第7位: 7票
「ネットワーク・エフェクト:マーダーボット・ダイアリー」 マーサ・ウェルズ(著)
2021年(第7回)日本翻訳大賞受賞作の「マーダーボット・ダイアリー」の続編
SFシリーズで、第3弾となる「逃亡テレメトリー:マーダーボット・ダイアリー」も2022年4月に発売されています。
「地上で僕らはつかの間きらめく」 オーシャン・ヴオン(著)
ベトナム系アメリカ詩人の自伝的長編
戦争に人生を狂わされた祖母と母は幼い僕を連れ、新天地アメリカへ渡ったーー。読み書きできない母は新しい生活に翻弄され、2人の苦難は僕にも影を落とす・・
そんな僕は、ある少年との出会いで生きる喜びを初めて感じーー
「丸い地球のどこかの曲がり角で」 ローレン・グロフ(著)
11篇を収めた短編集
フロリダを舞台にねっとりとした空気感の中、爬虫類に囲まれた生活。
複雑な人生と奇妙な逸話など、密度の濃い作品群
第8位: 6票
「自由研究には向かない殺人」 ホリー・ジャクソン(著)
イギリスの小さな町が舞台の謎解き青春ミステリ
〈ハヤカワ・ミステリマガジン〉ミステリが読みたい!【海外編】第1位
翻訳ミステリ大賞 最終候補作品
他、2021年末の各種ミステリランキングで第2位を独占した作品です。
ヤングアダルトにも人気の1冊。
「声をあげます」 チョン・セラン(著)
韓国新鋭作家の8つのSF短編集
第1回(2021年)みんなのつぶやき文学賞【海外編】第3位の「保健室のアン・ウニョン先生」や「フィフティ・ピープル」の作家の新刊。
地球の滅亡、感染症、大量消費・・
文明社会の行き詰まりから、今を生きる女性達にエールを贈る物語。
「もう死んでいる十二人の女たちと」 パク・ソルメ(著)
韓国新鋭作家の短編集
次世代韓国文学作家の独創的な幻想物語。
福島第一原発事故、光州事件、釜山の古里原発で3年前に起きた事故など、過去の事件と現在の私の交差。
第9位: 5票
- 「千個の青」 チョン・ソンラン(早川書房)
- 「マレー素描集」 アルフィアン・サアット(書肆侃侃房)
- 「まだまだという言葉」 クォン・ヨソン(河出書房新社)
- 「キルケ」 マデリン・ミラー(作品社)
- 「インディゴ」 クレメンス・J・ゼッツ(国書刊行会)
- 「骨を引き上げろ」 ジェスミン・ウォード(作品社)
- 「ブリーディング・エッジ」 トマス・ピンチョン(新潮社)
- 「緑の天幕」 リュドミラ・ウリツカヤ(新潮社)
第10位: 4票
- 「ブート・バザールの少年探偵」 ディーパ・アーナパーラ (早川書房)
- 「プエルトリコ行き477便」 ジュリー・クラーク(二見書房)
- 「雨の島」 呉明益 (河出書房新社)
- 「赤と白とロイヤルブルー」 ケイシー・マクイストン(二見書房)
- 「リングサイド」 林 育徳(小学館)
- 「赤い魚の夫婦」 グアダルーペ・ネッテル(現代書館)
- 「別の人」 カン・ファギル(エトセトラブックス)
- 「アフター・クロード」 アイリス・オーウェンス(国書刊行会)
- 「カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ」 サリー・ルーニー(早川書房)
【国内編】第2位「旅する練習」あらすじ&レビュー
「旅する練習」 乗代 雄介(著)
ロードノベル純文学
千葉県の我孫子市~鹿島アントラーズの本拠地まで利根川沿いを歩く、叔父と姪っ子。
中学受験を終えた姪はサッカーのリフティングをしながら、小説の叔父は風景を描写しながら。それぞれのスタイルで目的地を目指すが!?・・
レビュー
身近なロードノベルとして愛おしいと思えるような純文学でした。
170ページ程度で冊子も薄めなので、いっき読みもできるタイプです。
利根川沿いの風景、鳥などの描写も良く、言葉の力(表現のうまさ)のような文学的な雰囲気も感じました。
また、周辺を愛した柳田國男や志賀直哉などの文豪達や宿場町としての情報なども良いと思いました。
最後の1ページについては賛否両論あるようですが、個人的には「作家の意図をそのまま素直に受け入れたので良いのでは!?」(そういう空気感を感じる主人公の空気感がある!?)と思いました。