世界3大文学賞のひとつで、イギリスでも最も権威の高い文学賞のブッカー賞の歴代受賞作品をまとめています。
カズオ・イシグロ、マイケル・オンダーチェ、マーガレット・アトウッド、J・Mクッツェーなど..
ブッカー賞とは
ノーベル文学賞、ゴンクール賞(仏)と並び、世界3大文学のひとつと言われている(英国)イギリスの文学賞です。
英国最高の文学賞と言われています。
イギリス国内はもちろん、海外からも注目度(評価)の高い文学賞です。
歴史や文化、世界情勢などが反映された作品(小説)が豊富です。
【ブッカー賞】歴代受賞作一覧
2024年 受賞作
「Orbital」 Samantha Harvey(著)
Booker Prize Winner 2024
2024年の受賞作は、英国人作家サマンサ・ハーヴェイ氏の「オービタル」でした。
国際宇宙ステーションの宇宙飛行士チームを追った宇宙物語とのことです。
2023年 受賞作
「Prophet Song」 Paul Lynch(著)
THE BOOKER PRIZE 2023
2023年度のブッカー賞が、2023年11月27日に発表されました。
2023年度の受賞者は、アイルランドの小説家ポール・リンチさんの「預言者の歌」が受賞しました。
2022年 受賞作
「マーリ・アルメイダの七つの月」 シェハン・カルナティラカ(著)
スリランカ内戦の狂騒を描く幻想的な小説
1990年、コロンボ。戦場カメラマンのマーリ・アルメイダは、冥界の受付にいた。あの世もこの世も巻き込んだ混乱の行きつく先は!?ーー
スリランカ人のシェハン・カルナティアカ氏が受賞となりました。
2021年 受賞作
「約束」 デイモン・ガルガット(著)
【2021年】英国ブッカー賞 受賞作
南アフリカ。アパルトヘイトの社会変革の渦中。プレトリアで農場を営む白人家族と黒人メイドの土地所有権をめぐる約束が、40年に渡り運命を翻弄する・・ アフリカ文学最先端の1冊。
2021年ブッカー賞受賞作は、デイモン・グルグートの「約束」となりました。
2020年 受賞作
「シャギー・ベイン」 ダグラス・スチュアート(著)
デビュー作でのブッカー賞受賞となりました。
1980年代の英国(スコットランド)グラスゴー。母子の絆を描く物語。
2022年4月に翻訳発売されました。
2019年 受賞作
「少女、女、ほか」 バーナディン・エヴァリスト(著)
時代、背景がそれぞれ違う英国黒人女性が乗り越えてきた苦難を描く傑作翻訳小説。
時代も背景も違う12人の女性達が、人生を振り返る。
「誓願」 マーガレット・アトウッド(著)
「侍女の物語」続篇
1986年、「侍女の物語」でブッカー賞の最終候補作に選ばれています。
「待女」オブフレッドの物語から15年後。ギレアデの命運が大きく動き始める!?・・
マーガレット・アトウッドは、2000年にも「昏き目の暗殺者」でブッカー賞を受賞しています。
ハメット賞も受賞している現代文学の金字塔と言われている作品です。
2018年 受賞作
「ミルクマン」 アンナ・バーンズ(著)
国家独立に揺れる地のディストピア小説
1970年代、北アイルランドの首都ベルファストに生まれた18歳の少女。
北アイルランド紛争の過酷な情勢を背景に、狭いコミュニティの話。
2017年 受賞作
「リンカーンとさまよえる霊魂たち」 ジョージ・ソーンダーズ(著)
南北戦争中のアメリカ
幼い息子を亡くしたリンカーン大統領は、墓で霊魂達と交流する・・
それぞれの個性的な霊魂達。喪失と再生の感動作。
2015年 受賞作
「七つの殺人に関する簡潔な記録」 マーロン・ジェイムズ(著)
ボブ・マーリー暗殺未遂をテーマに据えた小説
ジャマイカ出身の作家として初めてのブッカー賞受賞。
1976年、レゲエスターのボブ・マーリーが襲撃された。アメリカを巻き込み国を二分され、政治緊張の高まってゆくーー
政治家、CIA工作員、アメリカ人記者、襲撃したギャングなど、闘いの真実とは!?・・
2014年 受賞作
「奥のほそ道」 リチャード・フラナガン(著)
タイとミャンマーにかかる「泰緬鉄道」がテーマの戦争小説
1943年、オーストラリア軍の軍医の主人公は、太平洋戦争で日本軍の捕虜となる。そして、死の鉄路と言われるタイとビルマを結ぶ「泰緬鉄道」での過酷な建設の重労働につく。
そこに、1通の手紙が届き!?・・
2013年 受賞作
「ルミナリーズ」 エレノア・キャトン(著)
2022年11月に翻訳発売のブッカー賞受賞作です。
19世紀、ニュージーランド。ゴールドラッシュに沸く時代を背景に、隠者の死や娼婦の悲劇、失踪した金鉱掘り・・ 事件の真相を求めて12人の男が集うが!?・・
「恥辱」 J・M・クッツェー(著)【レビュー】
ノーベル文学賞作家でもあるJ・M・クッツェーのブッカー賞受賞作です。
アパルトヘイト撤廃後の南アフリカ情勢を背景に、ひとりの男の転落の物語です。
レビュー
南アフリカの社会的、政治的、経済的諸問題が少しわかりました。
物語は読みやすく、悲惨さを感じない軽さです。
内容的には明るいテーマという感じではありませんが、暗い気持ちになる小説ではなく、悲壮さもあまり感じない読後感となりました。
切ない恋愛ともとれますが、現代にも通ずるセクハラ・パワハラ問題の闇というテーマも含んでいます。
ただ、期待しすぎたせいか、物語もあまり面白いとは感じなかったので、星3つとしました。冊子が薄くいっき読みタイプの軽さ(読みやすい)です。
おすすめかはわかりませんが、クッツェーのリアリズム小説として1冊は読んでおいていいかと思います。
リアリズム小説とは!?
リアリズム小説とは、小説というフィクションの中にあって、リアリティーが含まれている小説のことを言います。
現実と異なる世界を作り上げている小説に、非現実的な嘘ではなく、リアリティーが求められるのがリアリズム小説の特徴です。
簡単に言うと、全くの架空だけでなく、リアルを詰め込んでいるということになります。
例えば、南アフリカ出身のクッツェーの作品では、人種問題、アパルトヘイト政策など、現実社会の問題点を浮き彫りにしています。
おわりに
ノーベル文学賞作家のJ・M・クッツェーは、「マイケルK」と「恥辱」で2度のブッカー賞を受賞しています。
また、1992年には、ゴールデン・ブッカー賞(歴代の受賞作品の中からさらに優秀作品)を受賞したマイケル・オンダーチェの「イギリス人の患者」
1989年には、日本でもお馴染みとなったカズオ・イシグロの「日の名残り」などが受賞しています。