ミステリ小説の簡単なあらすじと個人レビューを記載しています。
選書はランダムですが、ジャンルはミステリ小説が中心です。
ミステリー小説 【個人の読了レビュー】
「あなたが誰かを殺した」 東野 圭吾(著)
このミステリがすごい!2024年版【国内編】第3位
<ハヤカワ>ミステリが読みたい!2024年版【国内篇】第5位
東野圭吾作品で、加賀恭一郎シリーズの最新作です。
5軒の別荘が密集する閉鎖的な場所で、夏のホームパーティー後に殺人事件が起きます。数人が殺され、犯人は誰か!?というミステリです。
レビュー
クローズド・サークル(閉鎖的)のような場所での連続殺人とのことで、犯人捜しが面白い1冊でした。
派手さはないものの、犯人を論理的に炙り出す推理(理論)を楽しめました。
現場に到着した加賀恭一郎が、鍵となるアイテムや時間の矛盾など、1つ1つ話を整理するだけで、自然と犯人が絞れていくという、推理の醍醐味を味わえます。
「推理」に焦点を当てたミステリで、物語的な派手さではないものの推理の過程を楽しみたい人に、おすすめの1冊だと感じました。
「真珠湾の冬」 ジェイムズ・ケストレル(著)
【2022年】エドガー賞 受賞作
1941年、ホノルル警察のマクレディは、納屋で発見された2人の死体を捜査することになる。その身元を調べるうち、話の規模がどんどん大きくなり、ウェーク島を経由し、香港、日本と舞台を移すことになる。。そんな折、太平洋戦争が勃発し!?・・
レビュー
原作Five Desemberが示す通り、1941年~1945年の5回の冬を通して主人公が壮大な捜査に巻き込まれる。
最初は、ハワイだけの事件と思いきや、犯人を追ううち、香港や日本も舞台となり、戦争の時代背景も混じえ、複雑になってきます。
軽過ぎず、重すぎず読みやすく、スラスラと読めるミステリでした。
犯人の動機も時代背景が絡む納得のもので、それに関わる人間も意外性があり、面白かったです。
恋愛要素、スパイ要素なども含みながら、人間ドラマ的なものも楽しめる小説でした。
ミステリだけでなく、普通におすすめの小説だと思います。
「われら闇より天を見る」 クリス・ウィタカー(著)
[2021年] 英国推理作家(CWA)賞 受賞作
30年前の被害者の姪にあたる少女ダッチェスと警察署長ウォークの2人主人公のような形で、話が交互に語られます。「無法者」を名乗る少女は!? 警察署長ウォークは、現在起きている事件を解決出来るのか!?・・
レビュー
原題「We begin at the end」終わりから始まる物語。というように、過去に起きてしまった事件と向き合いながら生きる人々の悲哀を軸に、現在の事件が起こります。
事件が3つほど起きるのでミステリですが、少女の成長物語、青春小説としても楽しめる小説だと感じました。
同じ地域で育った人間模様なども大きな要素で、犯人捜しのミステリというよりも「小説(物語)」を読んだという読後感でした。
「窓辺の愛書家」 エリー・グリフィス(著)
英国ミステリらしい謎解きビブリオ・ミステリでした。
謎解きもしっかりしたプロットではないかと感じました。
初読では見逃しがちなどうでもいいように思われる、ちょっとしたシーンにもヒントが埋め込まれています。
また、英国人らしい言い回しも多く、細かく理解出来ればさらに楽しめるのだろうなぁと感じました。
スコットランド第3の街、アバディーンの描写も多く、3人のロードノベル的要素も含まれています。
例えば、「花崗岩の街」(アバディーンは建築物の殆どが花崗岩で作られている)とか、宿泊したB&Bの名前が「炭鉱者労働の腕」(産業革命を支えた炭鉱の街)など、さりげなく街の情報も入っていたりします。
2度読みすると、さらに楽しめるかもしれません。
終盤まで登場人物も、背後で動いている人間も多く、犯人が全くわからない感じです。
犯人が見え出してからも展開があり、最後まで楽しく読める1冊だなと感じました。
前作「見知らぬ人」の主人公クレアの環境も出てくるあたり、前作読者には馴染みも感じられます。
「チェスナットマン」 セーアン・スヴァイストロプ(著)
バリー賞新人賞受賞
冒頭から衝撃的なシーンで凄惨な過去の事件が語られる。
その後、現代の事件が起き、ユーロポールの刑事と女性刑事のコンビが事件解決に捜査を始めます。そんな中、第2、第3の犠牲者が・・
そして、被害者の共通項が徐々に明らかになってくると社会問題も絡んでいることがわかります。
レビュー
意外な犯人と闇の深さがあり、北欧ミステリーらしい作品でした。
グロい描写もあり、クライムサスペンスという感じも強いミステリです。
680ページある骨太ミステリで長いので、途中でだれてしまいそうになりましたが、終盤にきて面白さと緊迫感がいっきに増してきました。
怪しい人物が少なく、犯人が全くわからない状況で終盤へ。
タイトルからもわかるとおり、チェスナットマン(栗人形)という素材を絡めた要素が北欧らしい雰囲気も満載でした。
また、脚本家らしく場面ごとに章が切られているので、テンポよく読み進められました。
「時計仕掛けの歪んだ罠」 アルネ・ダール(著)
スウェーデン売上1位の傑作犯罪サスペンス
3つの15歳の少女失踪事件。
主人公の刑事が犯人を追ううち、不審な人物の取調べを行なうが、話は意外な方面に展開し・・
レビュー
序盤からミステリーとしての書き方がうまく、グイグイ引き込まれました。
謎の整理なども分かりやすく書かれ、伏線が散りばめられています。
ただ、物語は根本から覆すような意外な展開になってきます。
15歳の少年達のボートハウスの挿入文は何なのか!?
第1部と第2部では様相が違ってきて、驚きの展開に・・
第3部から事件解決に向けて全体層が見えてきますが、ここからも単純ではない展開があるので、飽きずに読めます。
終盤にきても、さらに深い裏の闇が見えてきて、一筋縄で行かない所が奥深く面白かったです。
そして、最後の1ページの衝撃
北欧ミステリーらしい小説で、普通におすすめだと感じました。
「三分間の空隙(くうげき)」 アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム(著)
コロンビアが舞台のクライムノベル
北欧スウェーデンの作家による「三秒間の死角」の続編
コロンビア麻薬事情
- 70年代~90年代のメデジンカルテル、カリカルテルに続き、反政府ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)がコカイン産業を資金源。2016年にコロンビア政府と停戦合意
- あらゆる形で摂取されるコカインのうち、85%はコロンビア産
そこからメキシコのカルテル経由でアメリカ人600万人のもとに届けられる - コカインキッチンと言われるジャングルでの製造が欠かせない理由。コカインの製造は森やコカの葉が必要で、ゲリラの所有する土地で、ゲリラの許可を得て初めて栽培を行うことができる。
レビュー
ミステリというよりはクライムノベルという感じで、複雑過ぎず読みやすかったです。
書き下ろしのような感じで、いっきよみ出来るタイプの小説でした。
ただ、テーマも含め、比較的ありきたりな感じでもあるので、絶賛するほどの面白さは感じませんでした。
ウィンズロウのメキシコ麻薬戦争「犬の力」3部作にニュアンスが似ていますが、かなり単純化(安っぽく!?)したような印象がありました。
「凍氷」 ジェイムズ・トンプソン(著)
フィンランドが舞台の北欧ミステリです。「極夜カーモス」から続くシリーズ第2弾です。
2つの事件と向き合いながら歴史と現在の交錯、国事情やヘルシンキの街描写、歴史の問題点などが良かったです。ノワール小説のような感じです。
このシリーズは4冊ありますが、この2巻目の「凍氷」が一番面白かった気がします。
「湖の男」 アーナルデュル・インドリダソン(著)
「湿地」「緑衣の女」の2年連続ガラスの鍵賞でお馴染みの著者のシリーズ第4弾です。
ハンガリー動乱やプラハの春に軽く触れつつ、東西冷戦絡みで個人的に面白かったです。
冷戦絡みで史実とスパイ系の話で、個人的ランク上位にくる一冊でした。
「許されざる者」 レイフ・GW・ペーション(著)
CWA、ガラスの鍵賞等5冠
スウェーデンミステリ重鎮の警察小説です。時効への「法で裁けぬ悪を裁く」がテーマになっています。
犯人探しとしてはそんなに面白いとは思いませんでしたが、ドラマとして全体的に骨太で面白かったです。
北欧ミステリファンにはお馴染みのオロフ・パルメ首相暗殺事件触れつつ。
「笑う警官」 マイ・シューヴァル & ペール・ヴァールー (著)
スウェーデン発の金字塔と言われる警察小説です。
マルティンベックシリーズの第4弾。昔の小説で、少し古めです。
今の北欧ミステリーブームの火付け役とも言われてるが、個人的にはそんな面白くなかったです。
「緑衣の女」 アーナルデュル・インドリダソン(著)
氷の国アイスランド作家のミステリー。翻訳第2弾
ガラスの鍵賞2年連続受賞とのことで期待し過ぎたせいか、期待した程は面白く感じませんでした。
ただ、DVの小説ととれば、まあまあ考えさせられる問題点でした。
「特捜部Q 〜自撮りする女たち〜」 ユッシ・エーズラ・オールスン(著)
デンマーク作家の人気警察シリーズ第7弾
「特捜部Qシリーズ」は毎回デンマークの社会問題や闇を織り込んでいますが、今回は、社会福祉問題でした。不正受給絡み。
面白い警察小説シリーズとして安定しています。
読みやすさと面白さもちょうどいい感じです。
「ボックス21」 アンデシュルースルンド&ベリエヘルストレム(著)
バルト三国のリトアニアを絡めたミステリ。
「熊と踊れ」で多くの賞を受賞した著者のシリーズ第2弾です。
ヨーロッパの売春事情問題
リトアニアなどバルト三国とロシアの歴史的関係なども少し絡めた作品になっています。
展開の割に引っ張るので、長く感じなくもありませんでしたが、テーマとヨーロッパの闇が現実問題として良かったです。
「皇帝のかぎ煙草入れ」 ジョン・ディクスン・カー(著)
あらすじ
離婚してしまった主人公が新しく結婚する相手の家族と親交を深める中、相手家族の父親が家で何者かに殺されてしまうという流れです。
その時、現場近くで目撃していた主人公が疑われるが・・・
読了レビュー
家庭内で起きた殺人で、家族のメンバー、向かい住む主人公と前主人、メイド、メイドの妹程度が容疑者なので、比較的、犯人が絞れやすい感じでした。
多少、コンパクトにまとまった感じで、密室推理小説の古典として、そこそこ面白かったです。
読みやすく、冊子も薄いので、いっき読みなど軽い気持ちで読めました。
おわりに
星数の基準
- 物語の面白さ
- 街や自然などその土地の風景や情報描写
- 歴史的事実などの現実性
の3点から評価しています。